前回の記事では「サントーシャ(知足)」についてお話ししました。
今回は、ヨガの八支則の中で「タパス(苦行)」に焦点を当て、子育てにおいてどのように活かせるかについて探っていきます。

八支則についてはこちらをどうぞ!

タパスとは?

タパス(苦行)はサンスクリット語で「熱」「燃焼」「苦行」「鍛錬」などを意味し、ヨガの八支則(アシュタンガ・ヨガ)におけるニヤマ(勧戒)の一つです。
ヨガ哲学におけるタパスは、単なる苦痛を耐え忍ぶことではなく、自己成長のために意識的に努力し、内なる不純物を焼き払い、困難を乗り越える力を養うことを指します。
これは、自己鍛錬を通じて心身を浄化し、内なる光を輝かせるプロセスと捉えられます。
ヨガ哲学では、人間の苦しみの根源は無知(アヴィディヤ)にあると説きます。
無知から自我意識(アハンカーラ)が生じ、執着(ラーガ)や嫌悪(ドヴェーシャ)といった感情が生まれます。これらの感情は私たちを外の世界へと駆り立て、常に何かを求め、不足を感じさせます。
タパスは、これらのネガティブな感情や習慣、つまり心にこびり付いた不要なものを「燃焼」させ、自己の本質(アートマン)に近づくための重要な手段とされます。
子育てはまさに日々の努力の積み重ねであり、予期せぬ困難や試練に直面することもあります。
タパスの教えを取り入れることで、親としての成長を促し、困難を乗り越える強さを育み、より充実した子育てができるようになりはずです。
重要なのは、過度な苦行を強いるのではなく、自分の心身の状態をよく理解し、無理のない範囲で、しかし意識的に努力を続けることです。
例えば、早起きが苦手な人が無理に毎朝4時に起きるのではなく、少しずつ起床時間を早めていくように、段階的な努力が大切です。
1. タパスを日常に取り入れる方法

タパスを実践するためには、日々の生活の中で意識的に小さな努力を積み重ねる習慣を作ることが重要です。
これは、早起きや運動、瞑想などの習慣を確立することだけでなく、日常生活の中で直面する小さな不快な状況に意識的に向き合うことも含まれます。
ヨガ哲学では、私たちの行動や思考は潜在意識(サンスカーラ)に深く刻み込まれ、それが習慣や行動パターンを形成すると考えます。
タパスの実践は、このサンスカーラを浄化し、より良い習慣を育むこと、つまり自己変容を促すことにつながります。
実践方法
- 朝のルーティンを確立する:早起きを心がけ、1日の計画を立てる時間を設ける。
- 目標を設定する:育児の目標を明確にし、小さな一歩を積み重ねる。
- 不快な状況を受け入れる練習をする:例えば、子どもの癇癪や家事の忙しさに直面したときも冷静さを保つ。
具体例
- 30分の早起きを習慣化して、自分だけの時間を確保する。
その時間を使って、瞑想やヨガ、読書など、自分自身を整える時間を持つことで、一日を穏やかにスタートできます。
- 子どもが苦手なこと(例えば、おもちゃの片付け)を、一方的に命令するのではなく、遊びに取り入れるなど工夫して、一緒に乗り越える挑戦をする。
- 自己改善のための読書や学びの時間を持つ。育児書を読むだけでなく、興味のある分野の本を読むことで、知的好奇心を満たし、心の栄養となります。
声掛けの例
- 「少し大変だけど、続けるときっといいことがあるよ。一緒に頑張ろうね。」と、子どもだけでなく、自分自身にも言い聞かせることで、モチベーションを維持できます。
2. 困難を成長のチャンスに変える

ヨガ哲学では、人生における困難や試練は、魂の成長のための機会と捉えられます。
タパスの精神では、これらの困難に逃げることなく、勇気を持って立ち向かい、乗り越えることで、内なる強さや忍耐力、そして精神的な成熟を養うことができると考えます。
これは、苦難を通して自己の本質を磨くプロセスと言えるでしょう。
育児におけるトラブルや挑戦を、単なる苦労と捉えるのではなく、自己成長や家族の絆を深めるための貴重な機会として積極的に活用しましょう。
例えば、子どもの病気やケガなど、予期せぬ出来事だけでなく、毎日の子育てに対するストレスさえも、家族の絆を深め、互いを支え合う大切さを改めて認識する機会とします。
実践方法
- 困難や試練を成長のための機会と捉える。
- 感情的になるのではなく、問題解決に集中する。
- 子どもと一緒に挑戦を楽しむ。
具体例
- 夜泣きやイヤイヤ期などの困難な時期に「これは子どもの成長の証」と前向きに捉える。 同時に、自分自身の睡眠不足やストレスへの対処法を学ぶ機会と捉え、休息やリラックスのための時間を確保することも大切です。
- トラブル発生時には、感情的になるのではなく、深呼吸をして冷静さを保ち、問題の本質を見極め、解決策を探るように心がけましょう。
- 子どもと一緒に新しい料理に挑戦したり、アウトドア活動に参加したりするなど、共通の目標に向かって協力することで、達成感や喜びを分かち合い、家族の絆を深めることができます。
声掛けの例
- 「今は難しいけど、頑張った分だけ強くなれるよ。一緒に挑戦してみよう!」と、子どもを励ます言葉は、同時に自分自身への励ましにもなります。
3. 日常生活での規律を学ぶ

タパスを育むには、日常生活での規律を大切にすることが重要です。
ヨガ哲学では、規律は心身のエネルギーを整え、集中力を高めるために不可欠な要素とされています。
規則正しい生活は、心身のバランスを保ち、内なる平和を育む土台となります。
また、規律を守ることは、自己管理能力を高め、目標達成を容易にします。
親が規律を守る姿は、子どもにとって最高の模範となり、子ども自身の自己規律心を育むことにもつながります。
子どもは親の行動をよく見ており、言葉で教えるよりも、親の行動を通して多くを学びます。
実践方法
- ルールを一緒に作る:子どもと話し合いながら家庭内のルールを設定する。
- 規則正しい生活習慣を築く:起床時間、食事、遊び、就寝時間を一定にする。
- 親自身が規律を守る:親が模範を示すことで、子どもも自然と学びます。
具体例
- 毎晩決まった時間に家族全員で食事をすることは、家族のコミュニケーションを深めるだけでなく、生活リズムを整える効果もあります。
- 家族会議を開いてルールを話し合うことで、子どもはルールメイキングに参加する意識を持ち、ルールを守る重要性を理解しやすくなります。
- 子どもと一緒にスケジュール表を作り、守れたら褒めることで、子どもは計画性や時間管理能力を身につけることができます。
声掛けの例
- 「ルールを守ることで、みんなが気持ちよく過ごせるね。一緒にがんばろう。」と、ルールを守ることの意義を子どもに伝えることで、子どもの自主性を育みます。
4. 継続の力を教える

タパスの核心は、何事も諦めずに継続する力、つまり「継続は力なり」という教えです。
ヨガの実践においても、アーサナ(ポーズ)やプラーナヤーマ(呼吸法)、瞑想などを継続することで、心身の変化を実感することができます。
これは、タパスが単なる一時的な努力ではなく、継続的な自己鍛錬であることを示しています。
子どもに「やり抜く力」を教えるためには、親自身が目標に向かって努力し、継続する姿を見せることが何よりも大切です。
途中で諦めそうになった時も、目標を達成した時の喜びを想像することで、モチベーションを維持できます。
実践方法
- 長期間続けることの大切さを教える。
- 家庭内でのプロジェクトを一緒に計画し、最後までやり遂げる。
- 親自身も新しいスキルを学び、成長する姿を見せる。
具体例
- ピアノの練習やスポーツなど、長期間続けることの大切さを、具体的な例を挙げて教えることで、子どもは理解しやすくなります。例えば、「毎日少しずつ練習すれば、いつか好きな曲を弾けるようになるよ」などと伝えます。
- 家庭内でのプロジェクト(ガーデニングやDIYなど)を一緒に計画し、役割分担をすることで、子どもは責任感や協調性を学ぶことができます。
- 親自身も新しいスキル(例:語学や料理)を学び、成長する姿を見せることで、子どもは努力することの価値を実感し、自分も頑張ろうという気持ちになります。
声掛けの例
- 「初めは難しいかもしれないけど、続けていればできるようになるよ。」と励ますだけでなく、「ここまで頑張ったね、すごいね!」と、過程を褒めることで、子どもの自己肯定感を高めます。
5. 自分の成長を子どもに伝える

親自身がタパスを実践し、自己成長の過程を子どもと共有することは、子どもに大きな影響を与えます。
親が努力し、困難を乗り越える姿を見ることで、子どもは困難に立ち向かう勇気や、努力することの大切さを学びます。また、親が挫折を経験し、そこから学び成長する姿を見ることで、失敗を恐れずに挑戦することの大切さを学ぶことができます。これは、子どもにとって生きた教訓となり、自己肯定感を育むことにもつながります。
ヨガ哲学では、経験を通して得られる学びをアヌバヴァと呼び、非常に重要視しています。
親の経験談は、子どもにとって貴重なアヌバヴァの共有となり、子どもの成長を大きく助けるでしょう。
実践方法
- 目標を達成したときに子どもと喜びを分かち合う。
- 挫折したときの気持ちや、そこから学んだことを話す。
- 家族全員で努力の成果を共有する時間を作る。
具体例
- 目標を達成したときに子どもと喜びを分かち合うことで、子どもは目標達成の喜びを共有し、努力が報われることを実感できます。
- 挫折したときの気持ちや、そこから学んだことを率直に話すことで、子どもは失敗は恥ずかしいことではなく、成長の糧であることを学びます。
例えば、「最初はうまくいかなかったけど、原因を考えて、やり方を変えたらできるようになったんだ」などと具体的に話すことで、子どもは問題解決能力を学ぶことができます。
- 家族全員で努力の成果を共有する時間を作ることで、家族の一体感を高め、互いを尊重し、応援し合う気持ちを育むことができます。
声掛けの例
- 「ママもこれを頑張ったんだよ。少しずつだけど、できるようになったよ。」と、努力の過程を具体的に伝えることで、子どもは努力することの意義をより深く理解できます。
まとめ

タパスの実践は、単に苦しいことを耐え忍ぶことではなく、自己成長のための意識的な努力です。
子育てを通してタパを実践することで、親としてだけでなく、人間として大きく成長することができます。
日々の努力や規律を通じて、親が見せる姿は子どもにとって最高の学びとなり、子ども自身の成長を力強く後押しするでしょう。
タパスの教えは、子どもたちに困難に立ち向かう勇気、努力することの大切さ、そして何よりも自分自身を信じる力を与えてくれるでしょう。
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