ヨガの八支則を子育てに!第5回: アパリグラハ(不貧)

YOGA

前回の記事では、ブラフマチャリア(禁欲)の教えを子育てに取り入れる方法についてお話ししました。今回は、ヨガの八支則の中で重要な教えである「アパリグラハ(不貧)」に焦点を当て、日常生活、子育てでどのように活かすかを、自分なりに探っていきます。

アパリグラハ(不貧)とは?

アパリグラハは、ヨガの教えの中で「持たないこと」や「執着を手放すこと」として知られています。これは単に物を持たないという意味だけでなく、心の中の欲望や不安を手放し、感謝の心で生きることを意味します。

現代社会では、物や情報が溢れており、私たちはしばしばそれに執着し、ストレスや不安を感じることがあります。アパリグラハは、物質的な豊かさにとらわれず、心の豊かさや人とのつながりを大切にするための指針です。

この教えを現代の生活に結びつけると、「最小限主義」や「持続可能な生活」という概念とも関連しています。

私たちが物を過剰に持たないことで、心に余裕を持ち、環境にも優しい生活を送ることができます。また、物だけでなく、人間関係や情報にも執着しないことで、心の自由を手に入れることができるのです。

では、このアパリグラハの教えを、子育てにどのように取り入れることができるでしょうか?
以下の5つのテーマに沿って、具体的な方法を見ていきましょう。

1. 物を大切にする心を育てる

アパリグラハは、ただ「物を持たない」という意味ではなく、

必要以上に物を求めず、物質に執着しない

という教えです。

この姿勢は、物を大切にする心を育てる基盤となります。物を過剰に持つことで、本当に大切なものの価値を見失うことがあります。

反対に、物を少なくし、その一つ一つに感謝の気持ちを持つことで、物を大切に扱うことができ、長く愛用することが可能になります。

執着を手放すことによる感謝の心

物を無限に追い求めるのではなく、今手元にある物を大切にすることは、アパリグラハの教えに合致しています。執着から解放されることで、今ある物の価値に感謝し、それを大切にする心が育ちます。

必要な物だけを選ぶ心の整理

アパリグラハは「必要な物」だけを選ぶ生き方を推奨しています。無駄に物を増やすことを避け、本当に価値あるものを見極める力を養うことが、物を大切に扱う姿勢につながります。

物の長期使用と環境保護の精神

物を大切に長く使うことで、物質的な浪費を防ぎ、環境保護にもつながります。この点も、アパリグラハの持続可能な生活という考え方にぴったり合っています。物を少なくすることが、結果として物を大切にし、環境にも配慮した生き方となるのです。


実践方法

子どもたちに物を大切にする心を教えるために、家族全員で「物の持ち方」について見直す時間を作りましょう。必要な物だけを選び、不必要な物はリサイクルや寄付することを奨励します。

具体例

例えば、古くなったおもちゃや服を整理する際、「もう使わない物を誰かに譲ろう」という会話をし、地域のリサイクルセンターやチャリティ団体に寄付する活動を一緒に行います。また、物を長く使うための修理や手入れを教えることも有効です。

声掛けの例

「このおもちゃはもう遊ばないかな?ほかの子どもたちにあげると、彼らも楽しめるよね。大切に使ってくれる人に渡そう。」


2. 経験を大切にする

「経験を大切にする」ことは、物質的なものに執着せず、非物質的な価値を重視するというアパリグラハの教えに深く関係しています。

アパリグラハは、必要以上の物を持たず、内面的な豊かさや精神的な成長を重視する哲学です。

経験を大切にすることは、この教えに沿った実践であり、物質的な所有よりも大切なものに目を向ける生活の在り方を示しています。


物質的な所有を超える精神的な満足感

物質的な所有物に執着すると、持ち物や富によって自分の価値を判断しがちですが、アパリグラハはそれを手放すよう教えています。代わりに、経験を通じて得られる成長や喜びを重視することで、物に縛られることなく、精神的な満足感や内面的な豊かさを得ることができます。たとえば、家族で過ごす時間や、旅行、自然とのふれあい、ボランティア活動などの経験は、物質的なものに依存せずに心を豊かにします。

持続的な喜びと感謝の心の育成

物質的なものは消費されていく一方で、経験は心の中に長く残り、豊かな思い出や学びをもたらします。アパリグラハの教えでは、瞬間的な欲望の充足よりも、持続的な喜びを大切にすることが推奨されます。経験は、その場限りの物質的な喜びとは異なり、長期的に価値を提供し、感謝の心や生きる意味を深めます。

消費社会からの解放

現代社会は消費文化に溢れていますが、アパリグラハはその流れに逆らい、経験や関係性を大切にすることを提唱します。物を買うことよりも、家族や友人との共有体験、自然の中での時間、自分自身の内省など、非物質的な体験を優先することで、無駄な消費から自由になることができます。

物に頼らない幸せの追求

アパリグラハは、「物を持つこと」ではなく「今あるものに満足し、内面的な充足を得る」ことを重視します。経験を通じて得られる知識や感動は、物質的な所有に代わる本当の幸せを提供してくれます。この考え方は、過度な消費や物に頼る生活から脱却し、シンプルな生き方を促します。


実践方法

物に執着せず、経験や思い出を大切にする価値観を育てるために、お金をかけずに家族で楽しめる活動を積極的に取り入れましょう。特に、自然の中での体験や共同でのボランティア活動は、物質的な豊かさに依存しない豊かさを感じる良い機会です。

具体例

休日に家族でハイキングに出かけたり、近所の清掃活動に参加するなど、自然やコミュニティと触れ合う時間を意識して作ります。また、キャンプやピクニックのような自然体験を通じて、物では得られない心の満足感を子どもたちに教えることができます。

声掛けの例

「今日はみんなで外に出て、一緒に楽しい時間を過ごそう!自然の中で感じる風や鳥の声が、何よりの贅沢だよ。」


3. 欲望をコントロールする

「欲望をコントロールする」ことは、物質的な執着や過度な欲望からの解放を求めることに合致します。アパリグラハは、不要な物や過剰な欲求に執着せず、心の安定と内面的な満足を重視することを説いています。

欲望をコントロールすることは、心を物質的な依存や執着から解放し、シンプルで満たされた生活を送るための重要なステップです。


1. 無駄な消費を避ける

欲望に振り回されると、物や経験を必要以上に追い求めてしまいます。

アパリグラハの教えは、

自分にとって本当に必要なものを見極め、それ以外の過剰な欲求を手放すこと

ことを促しています。

たとえば、広告やSNSなどが生み出す「もっと欲しい」「もっと持ちたい」という欲望に流されず、自分の内面に向き合い、本当に必要なものだけを選ぶ姿勢がアパリグラハです。

これにより、無駄な消費を減らし、物に縛られない自由な生き方を実践できそうです。

2. 精神的な豊かさを重視する

アパリグラハは、物質的な豊かさではなく、精神的な豊かさに目を向ける教えです。

欲望をコントロールすることで、物質的な満足を追い求めることから解放され、内面的な成長や人間関係、自己の心の平和に目を向けることができます。

たとえば、何かを「欲しい」と感じたときに、その欲望の裏にある本当のニーズ(心の安定や安心感など)を見つめ、内面的な豊かさで満たしていくことが重要です。

3. 過剰な欲望が心の平穏を妨げる

過剰な欲望は、常に「もっと」「足りない」と感じさせ、心の不安やストレスを生み出します。

アパリグラハでは、欲望をコントロールすることで、こうした不安から解放され、心の平穏を保つことができるとされています。

欲望に支配されることなく、今あるものに感謝し、満足することが、アパリグラハの実践です。また、なぜ自分がその物を欲しているのか、なぜ「もっと多く」を求めるのか、その背後にある心理的な動機や欠乏感に気づくことが大切そうです。

たとえば、他人との比較から来る欲望や、不安を埋めるための買い物など、欲望の背後にある真の原因を理解することで、無駄な執着から解放されるかもしれません。

4. 自制心と簡素な生き方

アパリグラハは、自制心を養うことにも関連しています。欲望に振り回されず、自分をコントロールする力を身につけることで、心の平和と簡素な生活を実現できます。物質的な欲求を追い求めることよりも、内面的な豊かさや家族との絆、心の安定を大切にすることで、欲望を超えたシンプルな生き方が可能になりそうです。


実践方法

子どもたちが物やお金に対する欲望に振り回されないよう、日常的に「本当に必要かどうか」を問いかける習慣をつけましょう。特に、広告や周りの友達の影響で欲しくなる物について、冷静に判断するための助けを与えます。

具体例

子どもたちが物やお金に対する欲望に振り回されないよう、日常的に「本当に必要かどうか」を問いかける習慣をつけましょう。特に、広告や周りの友達の影響で欲しくなる物について、冷静に判断するための助けを与えます。

声掛けの例

「今欲しいと思っているものがあるけれど、少し時間を置いて、本当に必要かどうか考えてみようね。

もし今は買わなくてもいいなら、そのお金でみんなで素敵な経験ができるかもしれないよ。」


4. 他者への奉仕を促す

「他者への奉仕を促す」ことは、アパリグラハが個人の持ち物や執着を超え、他者や社会に対して無私の心で貢献することを教えているからです。

アパリグラハは、物質的な所有や欲望を手放すことによって、自分だけではなく他者との関係やコミュニティに目を向ける心の余裕を持つことを強調しています。

奉仕の精神は、物質的な執着を捨て、自分を超えて他者に対する思いやりを深めるアパリグラハの重要な実践となりそうです。


1. 物質的執着からの解放と心の余裕

アパリグラハは、物への執着を手放し、欲望をコントロールすることを教えています。この心の余裕が、他者に対する奉仕や貢献のためのエネルギーとなり、物質的な報酬を求めずに無償で助け合う精神を育みます。

2. 無私の心で社会貢献を促進

アパリグラハの理念は、個人の欲望を超え、無私の心で社会や他者に貢献することを重視しています。奉仕活動やボランティアを通じて、他者や社会のために行動することで、アパリグラハの実践が深まります。

3. 持続可能な社会の実現

アパリグラハは、持続可能な社会を目指し、個人が消費を抑え、コミュニティや環境に貢献することを推奨しています。他者への奉仕活動は、社会全体の調和や持続可能性に貢献し、アパリグラハの理念に沿った行動です。


実践方法

物質的な豊かさよりも、他者への奉仕を大切にする価値観を育てるために、家族で定期的にボランティア活動を行いましょう。自分たちの豊かさをシェアすることで、子どもたちは感謝の気持ちを育むことができます。

具体例

例えば、フードバンクへの寄付や地域の清掃活動に家族で参加することで、社会に貢献することの喜びを感じることができます。また、使わなくなった服や本を寄付する活動を通じて、自分たちの物が誰かの役に立つという実感を得られます。

声かけの例

「今度、みんなでフードバンクに行って、困っている人たちに食べ物を寄付しようね。他の人たちに役立つことができるって素敵だよね。」


5. シンプル・ライフを実践する

1. 物質的な所有欲の抑制

アパリグラハは、必要以上に物を所有することを避け、心の安定を求める教えです。

シンプルなライフスタイルは、物質的な所有欲を抑え、最低限の持ち物で満足することで、アパリグラハの実践につながりそうです。

2. 内面の豊かさを追求する

シンプルライフでは、物質的な豊かさよりも内面的な充実や心の平穏を重視します。

アパリグラハも、外部の物や快楽に頼らず、心の豊かさを追求することを教えているため、物に囚われない生き方はアパリグラハの精神を体現しています。

3. 持続可能な生活と環境保護

シンプルなライフスタイルは、消費を減らし、持続可能な生活を推進するため、環境への負荷を軽減します。

アパリグラハも、不要なものを求めず、環境や社会への配慮を持って生きることを重視しているため、シンプルライフはその教えを具体的に実践する方法の一つです。


実践方法

物を最小限にすることで、心に余裕を持ち、家族全員でシンプルな生活を楽しむことを目指します。片付けや整理整頓の時間を定期的に設け、物に執着せず、家族との時間を大切にする習慣を育てます。

具体例

毎週末に家族で部屋を片付ける時間を作り、不要な物はリサイクルや寄付に回すことを習慣化します。また、シンプルな生活空間を維持することで、家族全員が心地よく過ごせる環境を整えることができます。

声かけの例

「お部屋がきれいだと、心もすっきりするよね。みんなで少しずつ片付けて、必要な物だけを大切に使おう。」


名言・書籍の紹介

「物が少ないほど、心は豊かになる。」 

– ミニマリズムの概念を表す言葉で、アパリグラハの精神を象徴しています。

  1. ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(Henry David Thoreau)
    ソローは、物質的な豊かさを追求せず、シンプルな生活を実践することで精神的な豊かさを得ることを主張しました。

ソロー『森の生活』を漫画で読む

  1. レオ・ババウタ(Leo Babauta)
    ババウタは現代のミニマリスト作家であり、少ない持ち物で豊かな生活を送ることを提唱しています。

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  1. ジョシュア・フィールズ・ミルバーンとライアン・ニコデマス(The Minimalists)
    この二人は「物が少ないほど、心は自由になる」という考えを強調し、ミニマリズムの普及に貢献しています。

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次回は八支則の2番目ニヤマ(勧戒)について探っていきたいと思います!お楽しみに!

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